つばめ
0■つばめ
そういえばたしかこのあたり
アパートの一階の部屋で
カタコトのひとと暮らしてた
あの女性も見なくなった
雨煙るこんな日 窓辺で
彼らはいつも眺めていた
低く飛んだつばめもいない
この町は空き部屋のよう
たどたどしい愛は 誰かに壊された
つばめの巣のよう
海を越えてきたのに
この国でくらせないつばめたちが
つぶらな目をして 電線に停まり
ただ雨に打たれている
雨が降ると この一角は
サン・ジェルマンと似てなくもない
傘に隠れてひっそりと
雨の日わたしは出かける
わたしも前 この近くで
彼と暮らしていたけれど
彼は問題抱えてた
彼の暴力に ふたり泣いた
暴力のあとは 彼は以前(まえ)以上に
やさしくなった
ひとを愛せないのよ ひとなのにね
ひとってなぜかこわい
孤独なつばめの 姿を見上げて
わたしは自分にかさねる
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