ワインは飲まない
0■ワインは飲まない
「変わらないね」とそれは嘘
「逢いたかった」とそれも嘘
うしろから声をかけられ
すぐにあなただとわかった
髪をなおすしぐさのまま
ちょっとあなたに振り向いた
わたしいい女ぶってる
そうよ あいかわらずなのよ
あれからの日々など 言いつくせないけど
ひとつだけ決めたことがある
ワインは飲まない ワインは飲まない
あなたと最後に飲んだワインの味を
一生忘れたくないからよ
なぜってあなた聞かないでね
答えなんかもうないのよ
言いたいこと言えるうちは
聞きたいこともすぐ聞けた
イヤリングがやけに 重い今夜だけど
この掟(おきて)だけは守りたい
ワインは飲まない ワインは飲まない
あなたと最後に飲んだワインの味が
わたしの一生のたからなのよね