十七夜
0■灯篭
つくばね空木(うつぎ)の
咲き揃う 壮月
墓参りを済ませたあとの
綺麗な心でここに来た
寂しい寺は人影もなく
寂しさゆえに風情がある
去年の夏ぼくと一緒に
ここに来たあなたは今年
ぼくのふる里のこの寺の
過去帳に静かに眠ってる
賑わいだ昔 どこもかしこも
踊り過ぎた時代を過ぎて
ひとりまたひとり去ってゆく
いのちは束の間の灯篭の灯
消えるたび そこにうかぶ
漆黒の深い闇は宇宙だね
ひとは星の河を抱きながら
暫(しば)し時と語らってゆくよ
何にもなかった筈はない
生きてればみんな何かある
東京にもそう なかったものが
ここには少し残っている
きっとあなたも隣にいる
ぼくの行き先照らす灯篭の灯
十七夜 時は早い
のこされたもの震わす風が吹く