リンゴはひとつ
0■リンゴはひとつ
ジーンズでリンゴを磨いて
さくさくとかじったあとで
半分残ったからと
僕はいつも彼女に放る
リンゴはひとつだけれど そう
半分ずつにしたほうが
なんとなく幸福感
増してお得な感じがする
リンゴはひとつでいい
ふたつはいらない 多すぎる
いつも泣いてばっかのきみの顔みに
気まぐれに押しかけてから
じゃあなって 帰る間際の
儀式にしたいから リンゴはひとつ
年が経ち リンゴはウサギに
切られて置かれているよ
先ず僕が最初に食べ
そのあとたくさんの手が伸び
リンゴはひとつだけれど そう
食べてる 笑顔が 並んでる
すくない分 分け合って
食べたほうが美味しいから妙
いっぱいあればいいと
いうことではない ひとつでいい
大切なものはたったひとつでいい
何をえらぶのかは自由
我が家の食卓のデザートは
儀式のように 今も リンゴはひとつ