春待抱(まだ)き
0■春まだき
かなしきものは 病んだ女の美しさ
わたしのこころはなかったと
そういうことにしておいてと云う
かなしきものは 氷抱くよに溶けてゆく
あとどのぐらい生きられる?
そんなさびしいこと聞くなよおまえ
愛というにはまだ足りず
こころの深くに沈めておこう
お前の最後の場所も
おれの腕の中にすればいい
こんなに春はあふれても ふたり春待抱(まだ)き 春待抱(まだ)き
かなしきものは 手のひらからこぼれるひかり
しあわせは誰かの為祈る
かなしい切なさこそしあわせ
かなしきものは 身じろぎひとつせずただ
まっすぐに見つめ合う目と目
涙のひとつも出ないのにね
ふたりのかぼそい枝は
木々になれても森にはなれず
お前がいる場所はみな
おれの瞳が見守る中さ
手と手に愛が行き交って
こんなにもまだ 好きなのに ふたり春待抱(まだ)き 春待抱(まだ)き
愛というにはまだ足りず
こころの深くに沈めておこう
お前の最後の場所も
おれの腕の中にすればいい
こんなに春はあふれても ふたり春待抱(まだ)き 春待抱(まだ)き