■父よ
つくえに置いたら
この小さな籠からは
哀しい音色が響きます
虫などいないのに
淡く仄(ほの)かにゆれてる
わたしの心に映ります
それでもわたしは愛されていたのですね
さっき見つけた
黄ばんだ手紙には 私の名前の由来が
綴られて 幸せであれと添えられていた
気づけば父との
ふたりの暮らしになり
母は出て行ったっきりです
仕事一筋に
生きてきた でもそうせざる
を得なかったあなたを思う
ひと言も言わなかったけどあなたは寂しかった
胸痛めたでしょう
こどもとしてじゃなく にんげんとしてこころから
詫びさせて たくさんのありがとうにありがとう
あなたがこさえた
この小さな籠からは
哀しい音色が響きます
