This Old Feeling
0■This Old Feeling
理由(わけ)あり風情の男と女が
きれいな布で顔をスッポリ覆って
「馬鹿だな」「馬鹿よね」 手を取る雨月
待たせたフィアットで矢のように急ぐ
なにがかなしくてこんな恋
逃げるふたりに散りかかる
浮世はつめたい浪しぶき
さびしさ こよりにするような恋しさで ああ雲がくれ
似ている温もりはどこにでもあると
知ってたわ
でもあなたに似てる温もりなど他になかった
愚行 蛇行 逃避行 なみだの石なら
捨てるのよ わたしの袖は重過ぎる
ささ、参ろうか タイムトンネル
粘着(ねばつ)く手足をこすりあわせては
蠅(はえ)のしぐさで睦(むつ)み合おうか
「罪だよ」「罪だわ」 やせた黒髪(かみ)から
わたしはこんなにも赤裸々に出(いず)る
なにがうれしくてこんな恋
走る浄土はふたりには
酷ないろだよ 浪しぶき
信じて ひとつに溶け合うような愛で ああ突き抜ける
移り気なそぶりで 意地悪を言って
気を惹くわ
そう わたしはわたし以外の何物でもなかった
愚行 蛇行 逃避行 そっと足跡を
消してゆく 地を這いふたりは生きてゆく
ささ、空を舞う タイムトンネル
あなた恋しと棄てさせた
親兄弟より近くの他人
肌よりもっと寄り添うて