糸遊
0■糸遊
短く告げられた言葉に 驚きもしない
なぜ今なの?と尋ねてみる
陽ざしに振り返るように
あなたが言いよどんでいる言葉を私が
代わりに言ってあげましょうか
胸が締めつけられるけど
夏が過ぎるように あなたも私を過ぎたの
何度もさよならするうちに
思い出の中のそのひとは
私よりもあたたかいのですか
肯定も否定もしないあなたは風
二人はふわり泳ぐ糸遊の中へ
長いつきあいだから私 あなたに言わなかった
私をすり抜ける視線が
今もまだそのひと見てる
それでもお前だって いい女だったよって
嘘でも言って欲しかった
思い出の中のそのひとを
私よりも愛してるのですか
いっそつめの先まで飽きられたかった
二人はやがて消える糸遊のむこう