■花嫁衣裳
花々にかざられた
揺られる柩だった
14で私は死んだ
花嫁衣裳を着て
顔さえ知らぬひとに
嫁いでいく私は
宝石 纏(まと)い うつむく
死に化粧のようなかお
お祝いの祭りが出る
橋の向こうから すべてが
影絵になる頃
男が来る
それでもあした朝の鳥が
えだで鳴く頃は
私も 女になるのでしょう
この土地の風習を
躰におぼえさせた
家訓を守りぬくよう
自分を捨てて生きてた
跡継ぎが出来ないと
罵られ泣いていた
この家のしきたりには
逆らえはしなかった
男はなきがらになる
花嫁衣裳を 私が
ぬぎ捨てる前に
風が吹いた
それでもあした朝の鳥は
えだで鳴くでしょう
変わらず 空は晴れるのでしょう
