■沿線
わたしの胸には
いくつもの線路が
入り組んでてる
あなたにすべてを
話せない過去さえ
わたしをつくる
あなたと過ごした駅の名を
思い出せないように
ふたりつかの間乗り合わせただけよ
つぎの乗り継ぎ駅で ふたり下りる
時の列車を見送るの
虚飾に真実(まこと)を
装いに本心(こころ)を
忘れてきたわ
笑顔にいつわり
花束にうそを
かくしていたわ
あなたとの暮らし かなしくなって
ふと涙 胸を刺す
今はない夜行に こころを乗せながら
枕木の音遠く
あなたも一本の線路にすぎない
わたしの胸を横切る 車輪走る
沿線づたい雨はサクソフォン
