■もうなくなる
あとかたもなく
あなたに抱かれて
虚ろなブルースを
聴いている
椅子にかけてる
黒い紗(ろ)の着物
裾から黒揚羽(くろあげは)
舞い上がる
聞き流しているうちに
サブスクも終わる
ふたりのまつげの影がおちる
愛だと思ったものも もうなくなる
あすのことなど
教えなくていい
あなたの冷たさが
すきだから
シャワーをひねって
着がえてゆくのよ
それぞれのぬくもりへ
帰りましょう
ひとは生まれたときから
死んでゆくものよ
ふたりはどうしてこうなったの
愛だと言えるうちは 愛じゃない
あなたはわたしから
わたしはあなたから 出て行くの