熾火(おきび)
0■燠火(おきび）
かなしみはとても燃えやすいから
わたしはそれを暖炉に投げ入れる
はやく灰になることを願って
思い出という薪(まき)をそっとくべる
美しさは苦悩と共にある
やさしさのそばには傷もある
きみよ くるしいひとほど燃える火は大きい
誰かをあたためる燠火(おきび)になれ
かなしみの手紙はとても長い
わたしは読んでひとおもいに捨てる
はずみで生まれ はずみで死んでく
言葉の重さと命の軽さよ
他愛なく生きていけたらいいね
価値をもとめたら生きていけない
きみよ 悩めよ 正しいものなどないかも
次へと継がれる 燠火(おきび)を絶やすな
成功はそれ以上の意味を持たない
消えた炎の下に それは息づく
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