清閑
0■清閑
くずきりの包みたずさえ 訪れた女(ひと)は
そっと届けを差し出して 話しはじめる
行李(こうり)の中に幾重にも あなたの着ない服と
あなたを愛した過去たちが 私宅にあります
もうそろそろいいでしょう
愛するがゆえのことです
別れてください その女(ひと)のガーゼの
ハンカチが滲んだとき
橙花(とうか)の匂いがした
不粋な客なら粗茶で 帰そうものの
むしろおだやかな横顔 きれいになったね
それでもあなたの妻で いられてよかった
そんなふうに笑う かなしみひとつ残さずに
紙に印鑑(はん)を押しただけ
それだけじゃ終われませんね
そろそろ帰ると その女(ひと)が言うから
玄関先まで見送れば
イトトンボ振り向いた
「歌詞のようなブログ」
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