僕を忘るる歌
0■僕を忘るる歌
そっとおとすよ椿の紅ひとつ
いくつも寄ってくる鱗の光
円(まどか)にゆらめく水の鏡に
きみの口紅いろがほどかれて
何に姿かえても もはや僕は
きみの瞳には映りはしない
四十九日すぎてもなおきみは
僕をすべてのものに見つけては泣く
此処と其処を継いで繋がれるものは
こんなにも激しい愛だというのに
微かに笹鳴きが伝うだけ
忘れてよ 忘れてよ 僕を行かせて
思い出せ きみのため 僕を忘るる歌
思い出にまどろんでいるきみよ
僕のことを想うなら 次にある
きみの倖せにどうか会い給え
それが僕の切々たる願い
見えないけれど 手紙を放るよ
あとはそうさきみが受け取る番だ
哀しいものすべて 読み流し乍ら
忘れることをおぼえていきなさい
僕たちなかったことにされるのだろうか
誰も伝えない ささやかな愛のかたみ
風が行くこの寺の閑(しず)かさよ
わかってよ わかってよ 僕のためにも
歌ってよ きみのあす 僕を忘るる歌
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