おぼろ亭
0■おぼろ亭
そのアパートには家族が住んでた
カーテンを引いて 息を潜めてた
昼間というのにデンキが点いてて
すき間から目玉が覗く気がした
ルリカケスが不吉な声で鳴いた時 空室になってた
あの人たちいつ引っ越したのか 知らない
あれはもしかしたら
ずっと職探ししてた 普通の神さまたち
製鉄所の町をさえぎる電線が 風に鳴る
風に鳴る
なぜだかぼんやり 入った店で
箸も割らずに麺がのびる
会社に漬かっても 腰巾着はやだね
世間より自分に興味がないの
あの焼けた家族を思い出すよ 誰あろうあの人たち
僕の家族にほかならなかったのにね
エントリーシートもなく
ハロワにも通わず 失業して神は鬼に
そう生きざるを得なかったと涙目で 風に言う
風に言う
僕の背中が
きみの足音をおんぶしたら
紹介するよ
家族は 今は僕ひとり
製鉄所の町をさえぎる電線が 風に鳴る
風に鳴る
「歌詞のようなブログ」