会社員ガンバル
0■会社員ガンバル
ガランとした空き倉庫のような
町を君とふたりで歩いてる
母国語を日本語にしたのだから
「結婚しよう」僕らは誓った
排気ガスに煤（すす）けた歩道橋
ここを降りたらもうすぐ着くよ
式を挙げようとずっと決めてた神社
「ガイジン」って言葉のほかに
ふたりをあらわす蔑称があるから
僕らは目に見えないものにも傷つく
工場が動いていた頃には
この町もまだ生きていたんだよ
人も機械も煙のようにね
働いてたあれもこれもひとこま
ぼくらはこの国に来て最初は
まるで糸の切れた凧のようだった
ここに着かなければぼくら会わなかった
この土地の匂いなつかしい
里の両親がむかえてくれるよう
晴れバレとまた故郷に 帰ってきた
会社員ガンバル 会社員ガンバル
予習 演習 ガンバル
死んだ 工場群の煙突たち
太陽がよじのぼる
エクセルで家計簿つける そんな日々
今君としばらく 風に吹かれよう
人生 戯れ言がたのしいのよと
君と笑えばシャツに沁みる
あの日とおなじ春蝉（せみ）しぐれ
会社員ガンバル…
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