姉の恋文
0■姉の恋文
こんなかたちで はからずも
姉の恋文に ふれることは
姉の本意ではなかったでしょう
打ち明けないことが私の気持ち
悟られないことが私の気持ち
勝手に好きなのが私の気持ち
片恋だからいい私の気持ち
人生にくもりひとつもなく
よく晴れた日にまるでほほえむように
息絶えた姉のこと
実は弟のわたしもよく知らないのです
あまりに年が離れすぎてて
男の影はなかったようでした
仕事一筋に生きたひとでした
でもたまには洒落た服に着替えては
口紅つけて微笑むひとでした
この家に寄るのも久しぶりで
まだ姉がそこかしこに生きてるようです
この庭にも この木々にも
今まるで予感が押し寄せているかのように
レンギョウの花が石垣を
まさに燃えるように埋め尽くしています
打ち明けないことが私の気持ち
悟られないことが私の気持ち
勝手に好きなのが私の気持ち
片恋だからいい私の気持ち
想いの傍にいる私の気持ち
大いなる失意も私の気持ち
大事なひとだから私の気持ち
打ち明けはしない ああ 弟よ
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