施錠
0■施錠
御苑前で 降りるところを
乗り過ごしたふりで
あいつは尾いて来た
ドアの前 抱きすくめられ
私の足もとに
落ちたコンビニの袋
新月が割れてころがり
雑木林に聳(そび)えた都心の夜景
愛しさより痩せた体が
当たり前にまかり通る
心当たりのない夜を
ため息がまた施錠する
虚しさに満たされて
この部屋はもぬけの殻なのに
私は私を明け渡そうとはしないの
周知の仲 それでもふたりは
見ない 聞かない 言わない
知らない人と笑って
よごれきった つめを拭えば
除光液のにおい
つんと涙ぐませてる
敵対するものがなぜだか
親密度を増して 産み月にきてる
着地点をなくした想いが
浮かれて旋回していく
生殺しされるよりは
冷凍保存の
孤独がいい
あいつと会うたびひとつ
鍵束にかぎがふえてく
今さら私をだし抜いてもなにもないよ
拠り所のない痛みに 呻きに 叫びに
かわいた笑いで施錠するだけ
軛(くびき)を解くのね
「歌詞のようなブログ」
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