僕らの安息地
0■僕らの安息地
キスがただの唇の感触になる時
会話がただの言葉のラ列になる時
僕たちは仕方ないほど空白をなぞる
空白が僕たちになり変わったように
電車を何本見送っただろう
ホームにすれ違う人ごみに自分を見てる
どんな声にかき消されても
きみの声だけはわかると云った
あの頃が嘘に思える
僕らの安息地は 時として 裏切りだったり
やっかみだったり 爪の間の汚れた皮脂だったり
ふざけてやんの ふざけてやんの
あの高圧変電所の金網の風の向こう
歯茎がただの飛び込むネオンの色になる時
セックスがただのダルいかぞえ唄になる時
僕たちはユビの吸盤で輪郭をたどる
ふち取りが僕たちを与えてくように
数字のようにうもれてゆく
カルトの王道はJerk Offと街はすててく
どんな声に奪われても
きみの声だけは聞こえてたのに
すべてが白々いのはなぜ
僕らの消去法は 時として かなしみだったり
憂うつだったり こびりつくような 床の陰毛だったり
いたたまれない いたたまれない
僕らはつっけんどんに突っ立った鉄塔のまま
リキッド・コーヒーの匂いによみがえる
むしろ会わなかったほうがよかった
きみと僕のあいだを 最終電車がひるがえった
線路に夜が伸びた
「歌詞のようなブログ」
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