御荷鉾の三束雨 (みかぼのさんぞくあめ)
0■御荷鉾の三束雨 (みかぼのさんぞくあめ)
あなたに会うたび 一枚
脱ぐような 花ごろも
どうせなら私 毒婦の
役がいい にくまれて
きれいになるのよ 二枚
姿見で さっきから
あわせておとす 着物が
似合わない 童顔よ
あなたに抱いているのは
独りよがりなこのときめき
かなしみは 淡い夕顔に
吸わせてしまいましょう
さびしいなんて 言ったなら
未来を信じすぎだね
気障なあなたゆえ そちらの
お方もおなじ夜露に
あなたのことを ひそかに
想っておいででしょう
それらしいものを私にも
与えてほしいとねがうの
すがるような気持ちだけが
本当になりそうだから
愛してるなんて あなたより
先に言ったらさよならね
着物被（かぶ）せて かくれんぼ
いっそ朝まで かくれんぼ
そぼろ濡れて 雨足はやく
鬼のいぬ間に かくれんぼ
想いかくせず かくれんぼ
夜にまぎれて かくれんぼ
哀し雨音 頬ぬらし
どちらが鬼か かくれんぼ
本当は猫かもしれないのに
人間のつもりで誰かの尻尾
踏む私たち
私は毒を喰らうおんな
最後にきめたのは 母の形見の着物
うなじになじむ さびしさ
母も恋していたのでしょう
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