みんみん蝉
0■みんみん蝉
ちゃんちゃらおかしい あいつらおかしい
よろけるように 公衆トイレに
しゃがみ込んだ
トイレットペーパー 何回もちぎって
鼻を擤(か）むたび 嗚咽を漏らした
まだオレは小便垂れだ
お前は金魚じゃねえ 金魚すくいの紙だ
意味などわけわからなかった
あれは19 あぶれたオレに
声をかけてくれた
あんちゃん あんちゃん あいつら人間じゃねえ
やり方が きたねえ
男が泣くときは
両親(おや)が死んだ時だけなのに
素人彫り師の刺青(すみ)が疼きだす
俺の背中でみんみん蝉が鳴きました
冬だというのにみんみん蝉が鳴きました
ケンカしないのがケンカなんだよと
あんちゃんの言葉 今頃になって
意味がわかる
1円玉のこころ 金貸しは そう
忘れちゃだめだよと 言われたが
溶かしてきた出来事たち
あんちゃん あんちゃん オレを男にしてくれた
悲しいよ 頭があがらない
曇った物干し場
ブンスカ 寝て見てた あの頃さ
真っ正直者が馬鹿みるなんて
俺の背中でみんみん蝉が鳴きました
冬だというのにみんみん蝉が鳴きました
いきなり胸ぐら掴むむような
あさましい出来事がまかり通る
反吐が出る それでも
長いものに巻かれて
ああオレも歳を取ったもんだ
手折られた花 物言わぬ 夕暮れに
しまい忘れた風鈴に ふと思い出すひと
俺の背中でみんみん蝉が鳴きました
冬だというのにみんみん蝉が鳴きました
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