■嘘泣きから本泣き
映画なんて観てない
薄暗い雨の名画座でひとり
どこか座れる場所を探してた
レディース・デ-のレイトショー
私のひざで冷めるコーヒー
リッドにくちをつけることもなく
感情移入出来ない 映画にダブる
彼が泣いた時の台詞
まるでうそくさかった
あれから恋などしない女
映画もじきにハネるのに
席を立てないわたし 嘘泣きから本泣き
わたしは主婦のような
名女優になんてなりきれないし
ましてや愛人になどなれない
何も求めない 女はいない
B級シネマに照らされ
いやになる これだから 嘘泣きから本泣き
雨の蒸れた匂い
自分に酔いたい女たちが
金曜日にくすぶる
かなしい同窓会みたい