忘備録
0■忘備録
忘備録には何にも記されていない
もう忘れたということだけがある
忘備録には壊れたというからっぽで
空虚なデータの向こうに男と女がいる
気持ちなんかとうにもて余していて
あとはどちらが口火を切るかだけだ
微動だにしない 冷めたコーヒーに
色とりどりのネオンが身をなげる
お客さん いい季節になりましたね
お客さん もうすっかりと春ですよ
僕たちは毒づいたりしない
マスターの笑い声が そらぞらしくても
忘備録にはきみの何角関係と
僕の無関心がそこにある
忘備録など 多分存在しなかった
僕は僕 きみはきみのこだまを聞く
聞かれたくないことは言う筈もない
どの端末でもふたりを探せない
ババを引いたのはどっち どうでもいいのに
わからないことがわからなくなった
お客さん 当店のお勧めですよ
お客さん ケーキなどいかがでしょう
きみはわざとグラスを倒した
マスターが急いで拭く ジュースは拡がる
「歌詞のようなブログ」